祝祭凸 -
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9000270
「良い」とされるものが本当は呪詛の塊でした、みたいなのが好きなので書きました。
あと「いうて本丸とか刀剣とか創作上の世界の話だからあんまり怖くない」という意見があったので、じゃあ現実世界のお話をしますってやったら、いまだかつてないほど怒られました。何故なのか。
作中固有名詞ふりがなと造語の雑な解説:
・実瑣町→さんさまち。細かな実が多くついているという意。
・鏗过村→こうかむら。罪を責める鐘の音という意。
・祝祭→しゅくさい。いわいのまつり。
・祥石未山→きざみやま(明治辺りの文献では『きざしみやま』)。いまだ続く忌み明けの祭りの意。
・遙憮山→しょうぶやま。失望と慈愛を彷徨うものの意。
・軒谷→のきだに。軒は上にあるもの、谷は下にあるもの。あべこべの名付け。
開幕めっちゃどうでもいい小ネタ:
前座のスレ>>98の心霊写真は、打ち刀凸で撮影された写真。
祝祭について:
谷神である「オイメ様」は谷にこもり、災厄を抑えてくれている。
月に1度、谷の社へ供物を捧げる「朔祭り」と、
年に1度、オイメ様が谷から降りてきて鐘を鳴らしながら厄払いをする祝祭がある。
昼の祭りはオイメ様の厄払いをなぞらえたもの。昼の祭りで町を回る子供を『巫女』と呼ぶ。
というのが現在に伝えられている祭り。
元はこう↓(怪異発生当時の記述のため、町ではなく村表記になっています)
荒神である谷の神を鎮める巫女が定期的に谷から村へやってくる。
巫女は怨霊であり、村を呪う存在。
月に1度、供物を求めて降りてこようとするのは谷の社へ供物を置くことで防いでいる。
しかし年に1度、巫女の命日は供物があろうが祝詞を唱えようが絶対に村へ降りてくる。
そこで巫女の骨を溶かした軒風鈴を谷から町を一周して再び谷へ戻るように配置して順路を作っている。巫女の骨を溶かした軒風鈴を巫女が鳴らすことで「厄払い」という本来の役割を発揮するため、呪いの成就を防いでいる。
左足から順番に、体をぐるりと回るように軒風鈴が吊るしてある。
順路以外の軒風鈴は普通の鐘。
順路は元鏗过村地区の「オイメ様が歩くルート」とされている道で、街灯がチカチカしていたところ。
なぜなにオイメ様のコーナー:
谷の荒神を鎮める役割を持つ女を「巫女」として谷に住まわせた。
祝祭の大本は谷神が村へ災いをもたらさないように、巫女が年に1度の夜に、提灯へくくりつけた鐘(軒風鈴の元になっているもの)を鳴らしながら村を歩き、結界を張るという神事。神事の日、村人は昼間は火を焚いて御花(ごか)と呼ばれる植物を乾燥させたものを焼き、夜は家へ篭って巫女の鳴らす鐘を聞いた。
御花は村の各所へ咲く五つの花のことで、谷から流れてくる不浄を吸い上げていると考えられていた。花はそれぞれ、アザミ、ホウセンカ、ホオズキ、アセビ、ササユリ。不浄を吸ったそれらを焚き上げることで浄化している。
その昔、農作物が稀に見る不作になった年があった。村人は「供物を捧げているのにおかしい、巫女は仕事を行っていないに違いない」と月に1度の供物を捧げなくなった。
そもそも供物や結界を張るのは谷神の災厄を抑えるためであり、不作は巫女の仕事とは関係ない。供物は1日中ずっと祈りを捧げる巫女への衣食提供でもあり、体が動かなくなってしまっては谷神を抑えることが難しくなる。
困り果てた巫女が、少しでもいいから供物をいただけませんかと村人を説得しに何度も村へやってきたが、村人は一切聞く耳を持たなかった。これはその代の巫女が醜女であったせいもあり、余計にあたりが辛かった。
谷の実や水でなんとか生きながらえてはいたが、巫女は次第に弱っていった。それでも谷神を抑えるためにと何度も村へ訪れた。
すっかりみすぼらしい姿になった巫女に縋りつかれた村人が思わず痩せ細った体を振り払うと、バランスを崩した巫女は路傍の岩へ頭を打ちつけて死んでしまう。
恐ろしいことをしてしまったと村人たちは巫女の死体を担いで、巫女が住む谷の社へ運んだ。その途中、死んだと思われていた巫女が意識を取り戻した。酷く暴れ、こちらへ襲い掛かってくる巫女を村人は恐怖から再び殺し、死体を焼いて谷へ埋めた。
まつりのはじまりである。
谷神を鎮める者が居なくなり、それに加えて毎晩村へ訪れる巫女の呪いで村人の半数が死んだ。
それからしばらくしてたまたま村へ訪れた僧が話を聞き、巫女の骨を掘り起こすとそれを砕いて混ぜた金属で鐘を作り、御花の咲く場所を巡るようにして家々の軒へ吊るすように言った。左足の骨を混ぜた鐘はアザミの咲く家々へ、左手はホウセンカ、頭蓋はホオズキ、右手はアセビ、右足はササユリ、そして胴は村の中央へ祠を作り大鐘として奉納した。
巫女は己の体に縛られて順路から外れることが出来なくなり、巫女に反応して鳴る鐘の音によって村の呪いは浄化された。それから月に1度、巫女が住んでいた谷の社へ供物を捧げ、日に2度、大鐘を鳴らすことで巫女を谷へと封じ込めることが出来た。
巫女と供物が谷に揃うことで谷神は抑えられ、めでたしめでたしになった。
しかし巫女の命日の夜だけは、何をどうしても巫女が降りてくるのを防ぐことが出来ない。
その夜は村人は家から出てはならないとされた。
また、大鐘は巫女の骨を最も多く含んでおり、小分けにされた四肢と頭の鐘はひとつひとつが小さいので問題ないが、大鐘を巫女が見つけた場合、現世の物質を取り戻して怨霊の力が強まるかもしれないとして、巫女が降りてくる日は鳴らさないようにしている。小分けされた鐘は巫女が「現世の依代」とするには不十分だが、巫女を縛りつけて村を浄化するには十分。大鐘は巫女が谷にいる状態で音による浄化を行い、谷へ巫女を押し込めるために必要だが、巫女が大鐘を依代としてしまった場合、巫女の現世への影響が大きくなる(という僧の考え)。
これらが時代の移り変わりと共に変遷し、谷神と混同された巫女は「オイメ様」と呼ばれるようになり、村を浄化するために訪れるのだとされ、昼に「巫女」と呼ばれる山茶花をつけた子供達が家々を回るようになった。
おいめうた:
いつからか歌われるようになった歌。
鏗过村地区に生まれた人間は童歌として親から教わるので誰でも歌える。
誰が作ったのか、いつ頃から祭り歌となったのかは一切不明。
おいめうたの正しい歌詞はオイメ様(巫女)が歌っている方。
歌を作ったのは巫女。
おいめは逋と表記されることもある。逋は「負い目」。
歌詞の「胴回り」は自分が胴(大鐘)の回りを歩いていることを歌っている。
山茶花は谷の社へ咲く花。歌詞の「山茶花」は巫女の暗喩で、己が受けた仕打ちを指す。
巫女泣きで子供が見る夢は順路に封じられた巫女視点。
巫女の呪詛に感応して、童歌としてのおいめうたが歌えなくなる。
絶版本に収録されていた物騒な方の歌詞は、巫女泣きが起きた人間から聞き取りされたもの。
ドラム缶の写真:
ドラム缶は、社へ捧げた供物が不要になったら焼くために使われていた。
現在はガチの方の条例で禁止されているのでドラム缶は使われていない。
社からは少し離れたところで、巫女が殺された場所でもある。
場所が被ったのは単なる偶然。
一部の刀剣男士が見えていた血塗れの女性は巫女。
巫女には「現世へ存在する物質としての形がない」という側面があるので、
似た性質を持つ刀剣男士にだけ見えた。
甘苦い焦げ臭さ:
山茶花が焼けるにおい。体を焼かれた巫女の暗喩。
山茶花を実際に焼いたら甘苦いのかは分かりませんが、
甘いものを焦がしたようなにおいで花を焼いてることを表現したものです。
花といえば、おいめうたに出てくる花の花言葉を考察してくださった方がいらっしゃいました。
今回採用した花言葉は以下の通り。
アザミ→報復
ホウセンカ→私に触らないで
ホオズキ→偽り
アセビ→犠牲
ササユリ→清浄
ササユリだけ明るい花言葉なのは、巫女には『村を守るために身を削っているのに見た目で酷い仕打ちをされてきた挙句最終的には殺された恨みつらみ』と同時に、巫女としての矜持や良くしてくれた村人への慈しみがあるだろうなってことで入れました。メタ的な選出なので、物語の中では「要所にある花がたまたまこれだった」くらいの話です。
8mmテープ:
最初の方の映像=殺された場所から巫女が谷を降りてくる。
大きな鐘を見上げている=自分の胴のありかを把握している。
地面に落ちた軒風鈴を見る=順路の穴。
部屋の扉が実際に開いていなかったのは、まだ現世で存在する物質の依代を持っていないから。
※映像はイメージです。
という状態。
巫女が来たというより、巫女の思念が映しこまれた(巫女の想像上の映像)なので、本職勢が「何かきたような感じはしなかった」と言ってた。
地面に落ちた軒風鈴も想像上のもの。
そのうち起きたらそこからでてくる。
最後ほんとに音したんですけど???:
マジかよ。こわ
巫女泣き:
昼の祭りで「巫女」のお役目を負う子供が、町を歩く巫女(オイメ様)の視点を夢に見る怪異。
選出は完全にランダムで、1人も巫女泣きが出ない年もあるし、複数人出る年もある。
去年は平気だった子が次の年で巫女泣きにあったりもする。
町を呪いにくる存在の本来の呼び方である巫女と同じ呼称を受けることで、
本来の祝祭に触れやすくなっている。
夢の中で巫女(オイメ様)と同調することで、巫女(オイメ様)の記憶を共有する。
目が覚めた時に泣いているのは、過去に巫女が受けた仕打ちを悲しんでいるから。
夢が終わると同時に記憶の共有は解除されるので、夢の中で理解したことはほぼ覚えていない。
多くの場合は「語られている祝祭についての違和感」程度でしか残らないが、
おいめうたに関しては正しい歌詞でしか歌えなくなる。
ドッペルゲンガーみたいなやつ:
祝祭の夜は「骨入りの鐘」と「骨の持ち主」が揃うことで、順路は巫女の霊域になる。
そのため祝祭の夜に出歩くとふしぎなことがいーっぱいおきる。みんなもおでかけしてみてね^◯^