刀剣男士とオカルトと審神者14d(みちこさん篇)https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17344258 「まったまったの」に引きずられるせいで、まちこさんだったかみちこさんだったか分からなくなりがちなおばけ第一位。
■>>265 形見の鏡の話
>「うわ❤︎パワハラハゲじゃん❤︎髪も人望もないのカワイソー❤︎替えがきく社会の歯車の上に❤︎貧しい心❤︎貧しい毛根❤︎ざぁこ❤︎ざぁこ❤︎」
ここすき
鏡を形見分けされて幽霊の女の存在が判明し、しばらくしてから処分を決めたみたいに言ってたけど、実際は形見分けされた日から処分するって決めてた。
Еちゃんの言っていた通り当時は忙しかったので、処分を先送りにしていただけ。
家族親戚や本丸の刀剣男士への言い訳として幽霊話は渡りに船だった。もし幽霊が出なかったら日常的に立ち入らない部屋に放置してから折を見て適当に割って処分するつもりだった。
理由は祖母が嫌いだから。
Еちゃんにとって祖母は一片の情も残らない相手だった。周りには外面良くして「自分は家族のために尽くして苦労している」と吹聴し、家族でも祖父や父親や兄には媚びて、母親や自分や妹には横柄な態度で奴隷のような扱いをする。母親は自分の親の介護を理由にほとんど家に戻ってこなくなり、男連中は「もうすぐ死ぬ婆さんのやることだから」と取り合ってくれなかったので、高校入学と同時に小五の妹を連れて家を出た。審神者になる時は妹が家に帰りたくないと言ったので全寮制の中学に入れ、学費や生活費を出している。
>そう思ってЕちゃんを振り見た瞬間、彼女は能面のようにごっそりと感情を落として青江の言葉を聞いていた。
↑これは、青江の言葉が
>「この鏡を手元に置きたいなら、ここの青江にでも斬らせればいい。そうでないならば完全に廃棄してしまうんだね」
↑そうでないならば=手元に置く気がないなら、だったので自分が最初から鏡を処分するうつもりなのを見透かされていると気付いて「この"男"も理解せず止めるのだろうか」という考えが過ぎったから。
Еちゃんは家族のことがあって、男は自分の味方にはならないと思っている。自分の刀剣男士に対してもそのせいでどこか信頼しきれずにいる。
刀剣男士は自分達に理由がないところで主が悩んでいるのをなんとなく肌で察して見守っている。「祖母が大嫌いだから形見でも鏡は捨てる」って事情を話したら普通に「それは捨てた方がいい」って同意する。
>「え、なんで? 青江なら斬れるんでしょ? Еちゃんって自分の青江とあんまり仲良くないとか?」
>「主は御家族にたくさん愛されて、青江を信頼しているんだね」
↑斬れない理由を青江自身じゃなくて周囲の環境にあるとなんの疑問もなく考えているから。
>宗三が細めた目をこちらへ流し、慈しむように優しく、優しく、笑って言った。
>「祖母が嫌いだからですよ」
↑歌仙と青江は主の優しさや善性は得難いものだと思っているから、不必要な悪意からは隠してくれる。
宗三は理不尽な悪意や動機のない憎悪に触れて傷付くことも主の力になると思っているから、主が知りたがったら教えてくれる。
■>>279 お祭りの話
お祭りのシーンすき。
女性はあの駅で死んだ一般地縛霊。
審神者と目が合ったのでついてこようとしたけど青江と鬼丸に邪魔されたので睨んでた。
■>>286 チッチちゃんとカピバラちゃんの話
夢現で審神者が駅の女を思い出したことで女がやってきた。
二十三時四十八分のドンという音はカピバラちゃんの威嚇。審神者たちはカピバラちゃんの主である友人が招いた客だけど駅の女は違うから。
>ず、ず、と緩慢な動作で、マホガニーの縁から白い指先が現れる。
>誰かが机に乗って、こちらを覗き込もうとしているのだ。
↑ここまでは駅の女。
>ドン、と強く天板が打ちつけられる。
↑カピバラちゃん(中身)が駅の女の背中に刀を突き立てた。
>驚いて跳ねた肩が机の内壁へぶつかる。そして。
>ごろんと。
>逆さまに鬼の顔が覗いた。
↑カピバラちゃん(中身)が上から審神者の無事を確認するのに覗き込んだ。
カピバラちゃんの剥製は友人がフィールドワークに行った先で「チッチちゃんのお友達になってくれるかな?」ってぬいぐるみ感覚で買ってきた。
この剥製には鬼の面を被って刀を下げた男の怨霊が憑いてたが、あまりも霊感がないあまり何をしてもノーダメージの友人と、見えてるはずなのにマイペースに暮らすチッチちゃんが自分のことをひたすらカピバラちゃんとして扱うので「自分はカピバラちゃんなのでは?」と思い始めていたところ。
この審神者の一件で刀剣達はカピバラちゃんの中身に気付いたけど、無害そうなうちは放っておいてる。
カピバラちゃんは付喪神の刀剣男士(しかもいっぱいいる)には100割敵わないと理解してるので「自分は可愛いカピバラちゃんですけど」って刀剣がいる前では剥製の中に引っ込んで出てこなくなる。
チッチちゃんは「子分(自分より後に連れてこられてきたので)が怯えてる」と思って刀剣が庭に入ろうとすると威嚇する。
■>>300 人魚椅子の話
>蔵の内側で、たとえば何か、箱や袋に入れられた状態で誰かが呻いているような。
↑全身に麻袋を被せられて絞首刑にされた。
ヨーロッパのとある町で謎の連続死が発生した際、魔女の仕業だとして少し離れた集落の人間が全員処刑された。その集落では民間療法としてセテチュームというハーブが栽培されていた。
セテチュームは根を切り落として麻袋に入れ、オークの根本に三日三晩埋めて灰汁抜きをした後に塩水で茹でて乾燥させたものを煎じて飲む。当時は発汗作用や血流を良くする作用があると考えられており、発熱した時の薬として使われていた。
件の連続死で町の医者が死んでしまい、集落の医者が呼ばれた。そこで熱病の薬としてセテチュームを使ったが、町のオークが墓地の近くに生えていたため「墓を掘り起こして人骨を薬として使っている」と噂が広まり、「怪しげな呪術を使うに違いない」「連続死もあの医者の仕業では」と町人に糾弾された医者は殺されてしまった。
しかし連続死は収まらず、集落の人間は全員魔女だとして皆殺しにされた。
魔女は死ぬ間際に目を合わせた人間を呪い殺すとして全身を麻袋で包み、縄で縛り上げて首を吊らせる。その時に足場として使われた椅子の一つが裏手おじの家に伝わる椅子だった。
視界を塞がれて平衡感覚を失い、椅子から足を踏み外した人間が苦痛から逃れようともがく。その時、一つに縛られた足がまるで魚の鰭のように暴れたから人魚椅子。
■>>312 貝殻の話
大御福丸が航海中、船員の一人が海に落ちたと海上にて船を停止させた。
夜間のためライトで照らすとバシャバシャと水飛沫が立っており、時折海中から手が何かを掴もうと伸ばされる。
船員は急いで救命用の浮き輪を近くに投げて掴まるように声をかけるが、パニックになっているのか聞こえていないようだった。
そこで小型のボートを下ろして数名で救出に向かった。
それを船上で見守りながら船長が「それで、落ちたのは誰だ」と聞いた。船員達は甲板に集まった人間を目で数え、小型ボートの人数まで数えてを何度か繰り返した。誰もが不可解な、理解が出来ないといった顔をしていた。
「全員います」
だがそれはありえないことだった。
船が停止した地点は陸からかなり離れており、また、潮流の複雑な海域を超えたところにあるため船舶なしには辿り着けない。しかし周囲に船影はなく、加えて真夜中だ。遠泳でここまで来たとは到底考えられない。
船長は嫌な予感がして、救出に向かった船員を一度呼び戻そうと甲板の柵から身を乗り出した。
いつの間にか水飛沫は収まっており、下の船員が皆一様に動きを止めて海面を見ていた。
「おおい、一度上がってこい」
ボートの船員はその声に立ち上がり、そして全員が一斉に海に飛び込んだ。
なんだなんだと上の船員も柵に寄ってライトを掲げる。飛び込んだ船員は一人も浮かんでこなかった。真っ黒なインクのような水がとぷとぷと波打ち、無人になったボートだけが色を持って揺れている。
「せ、船長、どうしますか」
隣に立つ船員が海面を見張ったまま言う。
船長は厳しい表情で同じ場所を睥睨し、持っていた大型のライトを海へ落とした。大きな水飛沫が上がり、黒の内側を透かしながらライトが沈んでいく。深く沈んでいくにつれ細く消えていく光のその道中に、女が立っていた。
女は白い着物に坊さんの袈裟を引っ掛け、首のない赤ん坊を逆さに抱いてこちらを見上げていた。溢れそうなほど大きく開いた双眸はまばたきひとつせず、なんの感情もなくただただこちらへ向けられている。
なんだあれは。
立ち泳ぎをしている風でもない、海の中に立っているようにしか見えなかった。
誰もが言葉を失って女を見下ろしていた。と、船長が船の縁へ立った。
「ああああああああああああああああああああああああああ!」
重たい絶叫を迸らせ、船長は海へ飛び込んだ。
周囲の船員が停止する間もない、一瞬のことだった。
いったい何が起きているのか、口々に船長を呼びながら何人かは海を照らし、もう何人かは救援信号を送りに管制室へ向かおうとする。混乱の最中、船長の隣に立っていた船員が船の縁に立った。
この近辺で女を見た人間は海に飛び込んで死ぬ。
貝から聞こえた子供は別の場所で溺れてここまで流されてきた。
死ぬ間際に船が見えて、自分を必死に呼ぶ父親の声を思い出して「居場所を伝えなくては」とその想いが貝に宿っていた。
そこまでガチガチの怨霊でもないけど、良いものではないのであんまり関わらない方がいい。
■>>329/>>335 みちこさん殺しごっこ
自分では薬研が"みちこさん殺しごっこ"の名前を出すくだりめちゃエモ最高〜〜〜!って思ってる。いつもえほん見てくれる花丸フレンズのみんなたちも私よりえほんに詳しい勢が多くて「みちこさんの名前が出た瞬間スマホ投げました」って好評で嬉しかったです(*´◒`*)
>黄色い花
Аが好きだった花。
怪異ではあるけどほぼ無害なくらい些細なもの。青江が祓ってただのお花にしてくれてた。
委員長はАが好きだった花を見て気分が悪くなったのと、Аが死んでから黄色い花が届くっていう怪奇現象があるのに普通にその花飾ってる人間におまじないの良し悪しなんて分かるのか? って疑念が湧いて帰った。
みちこさん殺しごっこのみちこさんは、どちらにしようかなってあったじゃんスレででてきたみちこさんと同一。なんで全然関係ない地域でおまじないになってるのかと言うと、元々数え歌の時点で全然関係ない地域に飛び火してるような怪異だから。この町ではおまじないに変遷したって話。
■>>349 白椿おじと謎の婚姻届の話
>私はなるべく女性を見ないようにしながら、離縁状を細長く折って枝へと結びつけました。
>間違っても解けないように、紙の両端を逆手に握って力一杯に締めた、直後、縄と女の首がそこにありました。
>私は縄で女の首を締め上げていたんです。
↑ここすき
以前にみちこさん殺しごっこでみちこさんになった女性。
"みちこさん殺しごっこ"の「みちこさんへ」は、こいつをみちこさんに差し上げますという宛名。みちこさんに差し上げられた人間は近いうちに死に、みちこさんに取り込まれてみちこさんになる。
これは、Аや婚姻届おばけのように個々として出現するが、存在としてはみちこさんの一部であるということ。姿形はАで、生前の思考や言動もある程度なぞった性質を持っているが、怪異としては"みちこさん"である。Аという布をみちこさんという布にパッチワークのように繫げたのではなく、みちこさんという布の一部がАの性質になった。
白椿おじが離縁届を出そうとした時に首を絞めてたのは、この女性の死因が絞殺だったから。結婚前日、新郎の元カノに首を絞められて殺された。元カノは殺した後で恐ろしくなり、自殺に偽装するために山の木に吊るした。その時、妹から聞いていたみちこさん殺しごっこを思い出し、死体が消えるかもしれないと思って「みちこさんへ」と口にした。
白椿おじが結婚相手に選ばれたのに理由ない。みちこさんの一部になった女性が活性化した時に適当に選ばれたのが白椿おじだった。
女性が新郎のことを深く愛していた性質が反映され、あの女性の部分のみ「怪異の自分に魅入られてしまって死んでしまうのが可哀想。逃してあげたい」という意思がある。なので離"縁"届。ただ、意思はあるけど結局はみちこさんなので女性がどんなに逃してあげたいって思ってても、ターゲットになった相手は死ぬ。
今回は離縁したあとでみちこさんが認識出来ないようになったので助かった。
■岩井先生
岩井先生は昔からこの町にいた怪異。
塾生の間でだけたまに語られる程度の噂話だったが、塾が潰れた時に元塾生だった高校生が小学生の妹に教え、妹が友達に教えて広まった。潰れたことで塾生以外の人間も入り込めるようになったため、岩井先生の儀式を行う人間が増えて広まりやすかった。
岩井先生は"祝い先生"で"呪い先生"。
呪いの儀式や幽霊のことを教えてくれるのではなく、岩井先生が教えたことが呪いや怪奇になる。
今回の金茶髪ちゃんのことも、岩井先生が『虹を探す幽霊』だと教えたからそうなった。岩井先生に聞く前は場の霊力異常で現れた浮遊霊だった。
塾の裏手の松の木におみくじを結ぶのは、あの場所が神域の一部だと認識されており「土地神が住んでいる場所の木に結んだ方が願いが叶う」といった土着信仰のようなものがあるため。元々あの場所には周辺の家々が共同で祀っている屋敷神のようなものの祠があり、祠が撤去されるまでは神社の祭りに合わせて飾り付けられていたり供物台などが設置されていたため、屋敷神と知らない人間は神社の一部だと勘違いしていた。
足跡が松の木に続いていたのは、岩井先生が生み出した呪いであるため岩井先生の居場所である塾に戻ってきていたから。足跡が途切れるのはあそこを境目に神域になるから。祓うほどの力はないが、ある程度まで呪いや霊を抑制している。
金茶髪ちゃんが翌日に送迎を断ったのは、委員長を裏切って自分だけ助かろうとした罪悪感に耐えられなくなったから。
■>>361 二回目のみちこさん殺しごっこ
>木陰で喋る委員長の端末は、子供の靴先と、己に寄り添うように置かれたうさぎの小さなぬいぐるみを青白く照らし出していた。
■>>367
岩井先生が委員長に教えたのは『人間の首を絞めながら「みちこさんへ」と唱えると、相手がみちこさんに捧げられて死ぬ』という呪い。
委員長がАでみちこさん殺しごっこをした時に発生した異常霊力は全て、岩井先生が委員長に作った呪いを実現させるために消費されたので傍目には霊力変動がなかったように見える。
委員長が他の児童に教えたのはぬいぐるみや人形などで代用していたため、霊力変動が発生してもそこまで激しくなりにくかった。霊感がある子供や、本当に呪った相手が死んだ時に大きな変動が発生した。
委員長の二回目のみちこさん殺しごっこで場の霊力が乱れたのは、もう霊力消費しなくても呪いは実在してるから。
>そんなことを考えているうちに、言いたいことが尽きたのか女性は静かになった。
↑あーちゃんは下を向いていて気付かなかったが、自分がドアを殴ってないタイミングで音が鳴ったから母親はその音の方を見ていた。
玄関先に来てたのは、この町で呪いの儀式と混ざって変遷した部分のみちこさん。
委員長は自分をみちこさんに差し出した。Аを呪いで殺した時から自分もみちこさんで死ぬって決めてた。
みちこさん殺しごっこの成立に必要なのは"首を絞めること"で、首を絞めたものが死ぬ必要なはい。そのため委員長は、自分が首を吊った時点で呪いが成立して数分後に死ぬことで呪いが成就される、と考えていた。しかし自殺で死ぬのは呪いで死ぬことではないので、呪いが成立したのに呪いの対象が存在しない状態になった。
つまりこの町に、人を殺す呪いが活性化した状態で放たれた。おそらく無差別に誰かが殺されるが、差し出された人間を殺すまで非活性化しないため誰を殺しても止まらない。委員長を殺したら止まる。
■>>383 お別れ会
・作文
「将来の夢、五年三組、■■■■(Аの名前)」
「私の将来の夢は、学校の先生になることです」
・二回目のみちこさん殺しごっこ
「金茶髪ちゃんと委員長は仲が良かったんだと思う。金茶髪ちゃんがランドセルにつけてたキーホルダーのぬいぐるみと同じものが委員長の自殺現場にもあって、ずっと見えるところに座らされてたから」
・流れた音声について
黒髪ちゃんがやった。
放送委員会には放送室の合鍵がある。これは他の委員が鍵を返し忘れて帰宅したり、誰が持ってるか分からない時のために生徒間だけで共有されているもの。
この鍵を使って放送室に入り、タイマーを使っていじめ現場の音声が体育館に流れるようにした。
作文音声は知らない。
・拍手
一人が拍手を始めて、それが伝播した。
>女子児童は拍手を止めずに体育館から連れ出され、箱の中から外へと音が広がっていく。
↑呪いの流出の暗喩
■うってのばして
>赤い木の一番低い枝に、黄色い花をつけた枝が括り下げられている。
↑委員長
呪殺の不成立によりみちこさんの一部にならなかった委員長を正しく殺し直すための儀式。
でも青江以外は誰もこの儀式の正しい意味を知らない。
>「今は入らない方がいい。巻き込まれるから」
>きっと青江は今なにが起きているか、なにが起ころうとしているのか察しているんじゃないかと思う。止めるにはきっと手遅れで、俺を関わらせたくないから煮え切らない返事をしたのではないかと。
>町立小学校の教員だろう。
>そうして俺たちが避けた隙間ですれ違い、大股で一足飛びに広場へと飛び込んだ。
>青江は男性を止めなかった。
委員長を殺すまでみちこさん殺しごっこの呪いは非活性化しない。
>男性は一際大きな声で叫んで無理やり輪の中央へと入っていった。それから吊り下げられていた花を掴み、紐を括っている紅葉樹の枝ごと折り取って地面に叩きつけた。
>教員の足元へ、ヒースがぐったり横たわっている。叩き落とされた時に折れたのか、束ねられていた一本があらぬ方向へ捻じ曲がって花弁をぐちゃぐちゃに散らばらせている黄色い花。
↑委員長は教員がころした
>まったまったのみちこさん うってのばしてひっぱって
>まいて(???)て じごくいき
>音は下まで落ちて根元の朽ち葉を圧し潰し、間髪入れずに地面を踏み荒らしながらどこかへ走り去っていった、ようだった。
↓じごくいき
■いじめ主犯のАについて
Аの家は代々この町を取りまとめてきた家系であり、町長が据えられた現在においても「何かあれば庄屋さんに」という意識が町民に根付いている。
Аは一人娘であり、将来はこの家を継ぐ者としてずっと育てられてきた。また、А自身も現当主である祖父をとても慕っており、将来は祖父のように立派に当主を勤め上げるつもりでいた。
委員長が引っ越してきてすぐにいじめが始まったわけではない。
むしろ、村社会のような排他的な面がある土地で暮らすのは大変だろうと、Аは委員長一家を助けていた。庄屋の孫娘である自分が仲良くすれば、町民も倣って一家に仲良くすると分かっていたから。
しかしАは委員長一家が越してきた理由を知らなかった。祖父や大人たちはАに隠していた。
委員長の父親はАの祖父と借金返済の話し合いを行い、金額が金額であるため担保として高価な家財や土地の権利を一部預かることに同意した。この際、どの家財を担保とするのかまたは売却するのか、土地はどこを預けるのか、などの話し合いが長期化する可能性があり、ちょうど母親の勤務先が隣町に異動になったため一時的に町へ越してきた。
契約の中で、Аの祖父は妻(Аの祖母にあたる)の形見であるブローチを手放した。これは家財の中ではそこまで価値のあるものではなく、子供や孫に少しでも財産を残すためだった。
この頃から祖父は体調を崩し、委員長が五学年に上がった頃に他界した。
祖父が死んだ時に初めてАは借金や形見のブローチを手放した話を聞いた。
そして、祖父が他界した日、町立小学校では生徒会長を選ぶ選挙の結果が発表された。
生徒会長には五学年から立候補できる。Аはもちろん立候補し、周囲も当然Аが選ばれると思っていた。今まで五学年で当選した児童はおらず、Аは学校創立初の五学年生徒会長になり、将来この町を背負う娘としての手腕を培っていく。
しかし当選したのは委員長だった。
Аはショックを受けたが、委員長の学力が自分よりも優れていることは認めていたし、やや閉塞的な町に新たな風を吹かせるためには彼女の就任は意味のあることだとステージの上で祝福した。
そして誰もいない体育館の裏で、祖父との約束を守れなかった、自分はこの町を守らなきゃいけないのに、と声もなく泣いた。
Аの側で彼女の頑張りをずっと見ていた二人の親友も一緒に泣きながら「来年は絶対なろう」「どんなことがあっても、町のみんながАを応援してるんだから」と彼女を抱きしめた。
ひとしきり泣いて落ち着きを取り戻したАは、二人の前で子供のように泣いてしまったのが気恥ずかしくなった。「教室に忘れ物しちゃったから取りに行ってくる」と、ついでに顔を洗ってこようとクラスに戻り、中で同じクラスの男子数人が話すのを聞いた。
「お前さ、どっち投票した?」
「●●」
「マジ? 俺もどうせАが当選すると思ってシャレで●●に入れたんだけど」
「俺は●●の方が顔可愛いから入れた」
「お前やば(笑)」
絶対に生徒会長になるという祖父との約束を自分は守れなかった。
こんなくだならない理由で。
祖父は死んでもう二度と約束は果たせなくなった。
祖父は大事な、祖母の形見を手放した。
祖母の形見のブローチはヒースの花を象ったもので、『荒野でも咲く花、孤独な花。あの花が咲いていると、その荒野もヒースと呼ばれる。そして他に移されることを嫌う、繊細な花。まるであなたのようだ』と祖父が祖母にプロポーズした時に贈った。Аはこの話が大好きで、祖母が存命の時に何度も「聞かせてほしい」とねだった。祖父はそこまで気に入っているなら同じものをАにも贈ろうかと提案したが、「私もおじいちゃんみたいに素敵な人からもらうからいいの」とすまして言って、「そうかそうか」と頭を撫でられた。
そういう温かい思い出も、祖父の命も、約束も、自分の過去も未来も、全てをあの一家に奪われた。
そんな気がした。
庄屋の孫娘である自分が親しくすれば町民もそれに倣う。
委員長の名前はえりか。
■金茶髪ちゃんと黒髪ちゃんについて
金茶髪ちゃんは委員長より少し前に引っ越してきた。
髪や目の色を理由にクラスメイトからなんとなく疎遠にされていて、唯一仲良くしてくれていたのが隣の席の黒髪ちゃんだった。
しばらくして委員長が引っ越してきて、町外の人間同士で通じるものがあり二人はすぐに親友になった。
当時の委員長は大人しいけれどよく笑う子供で、本やネットを通じて色々な話を知っていた。金茶髪ちゃんは人の話を聞くのが好きなタイプで、二人は時間を忘れてお喋りに興じることもあった。
委員長へのいじめが始まった時、庇おうとした金茶髪ちゃんを止めたのは黒髪ちゃんだった。
もし委員長を庇えば金茶髪ちゃんもターゲットにされる。それに金茶髪ちゃんの家にいるのはおばあさんだけで、おばあさんはこの町の他に行くところがないから被害にあうのは自分だけじゃない。だから表立って庇ったりするのはよくないと。
金茶髪ちゃんと黒髪ちゃんはАたちにバレないように、さりげなく委員長を助けようとした。けれど教師すら味方ではない環境でそれはとても困難なことで、結果的に委員長を見殺しにしてしまった。
お別れ会の日、乱が保健室を出て行った後で金茶髪ちゃんは「えりかちゃんに謝りに行きたい」と言い出した。
黒髪ちゃんは「今度は絶対成功する方法を考えるから、私を一人にしないで、委員長もあなたもいなくならないで」と懇願し、そうして二人で委員長をみちこさんにする方法を見つけた。
■黒髪ちゃんについて
黒髪ちゃんは代々この町に住んでいる人間で、この町にうんざりしていた。
高校は県外に出て、そのまま町には戻らないつもりでいた。
そんな時に金茶髪ちゃんが転校してきた。
都会に住んでいた、外国人のような外見の女の子。
自分にはないものばかりで出来ている彼女が、黒髪ちゃんには光に見えた。自分がこの子をくだらない町から守らなくてはならない、といつも一緒にいた。ランドセルの色が偶然同じだったのも、運命に思えた。
少しして委員長が引っ越してきた。
金茶髪ちゃんはあっという間に委員長と仲良くなった。委員長も金茶髪ちゃんと同じく都会から来た子供で、流行や好きなもの、前の学校などとても話が合う。金茶髪ちゃんほど内気でも人見知りでもなく、自分が守らなくても、むしろ金茶髪ちゃんのことも委員長が守れるくらいしっかりしていた。
黒髪ちゃんはこの時はじめて自分の中にある排他的な悪意を見た。結局、自分もこの町と同じなのだと絶望した。
だから黒髪ちゃんは、自分の中に生まれる感情を全部無視した。無視すれば、存在しないことになる。自分はこの町の人間とは違うままでいたいから。
委員長がいじめにあっている時、夜中に委員長の家に行った。委員長の両親が仕事で留守にする日は町民の誰もが知っていた。
金茶髪ちゃんの家庭の事情があって表立っては助けられないことを謝罪し、けれど自分たちは味方であると話した。そして、いわい先生のことを教えた。
結果としていじめは無くなったが、委員長は孤立してしまった。
委員長はもう自分達とは仲良くしないだろうし、金茶髪ちゃんもいじめを止めなかった分際でまた仲良くなんて出来ないと思っている。そして金茶髪ちゃんは、委員長がひとりになったことをとても気に病んでいる。
だから黒髪ちゃんは下級生に教えた。
「嫌いな男子を呪いたいなら、委員長に相談すればきっと助けてもらえる」
金茶髪ちゃんを自殺させないために、黒髪ちゃんはまだ誰も戻っていない教室に彼女を連れて戻った。
そして委員長のロッカーの扉を開き、その裏側にテープで貼り付けられていたノートを剥がした。
委員長がАを呪う方法を書いたノート。もし委員長に誰かが悪戯しようとしたら、呪いのノートが見えるようになっている。Аの死後は誰も委員長に手を出さなかったから、きっとここにノートがあるのは本人と自分しか知らない。
正しい呪いの手順が分かれば、この町の人間に復讐ができる。
死人に会うことは出来なくとも、復讐の手段があることで「委員長のために誰かを殺すか」と金茶髪ちゃんは悩むだろう。そうすれば自殺を決意するまでの時間を引き伸ばすことが出来る。
ノートをめくると、最初のページにみちこさん殺しごっこのやり方が書いてあった。
Аにわざと見付けさせるために大きめに書かれた文字。
えりかちゃん、と呟いて金茶髪ちゃんが涙をこぼす。
黒髪ちゃんは他に何か、委員長の痕跡がないかという想いでページをめくった。
Аへの罠のために作ったノートだから、他には何も書かれていない。はずだった。
最後のページにまた、みちこさん殺しごっことは違う呪いの方法が貼り付けてあった。
コピー用紙に印刷されたそれは手書きではなく、誰が書いたのかは分からない。ただ、これは死んだ人を呼び戻せる方法だと思った。
この儀式をするためにはたくさんの人間が要る。
黒髪ちゃんは再び下級生に教えた。
「委員長が怨霊になってしまった。きっと無差別に私たちを殺しにくる……だから委員長をみちこさんにして、呼び出さなければ現れないようにした方がいいかも」
■お題
歌仙兼定(極)/後ろ姿
歌仙兼定/その背もたれはカーブしていた
鶴丸国永/カピバラ
乱藤四郎/金魚すくい
乱藤四郎/マリオネット
泛塵/貝殻
山姥切国広(極)/黄色い花束
大倶利伽羅/判子
大倶利伽羅/繫いだ手
鬼丸国綱/夢
三日月宗近/虹
にっかり青江/深夜のファミレス
にっかり青江/ぶんぶんチョッパー
薬研藤四郎/悪魔
加州清光/天使