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刀剣男士とオカルトと審神者11
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12778071
 どぉして折角送ってもらったお題企画でこんな暗くて救いがないみたいなお話いっぱい書いたの?(数ヶ月越しの純粋な疑問)


■ろ聖生会
 人間は器である。
 肉体の死によって外殻が破れ、そこで初めてその人間は本当の姿で生まれることが出来る。
 人間というものは一律に同じような外殻の形をしているが、殻の中身を見ることは誰にもできない。
 これを肉体が生きている状態で見るとされているのが、梠被眼蛾(ロヒメガ)である。ロヒメガは鎌倉中期にまとめられた怪談集を始めとした、地方の妖怪や死霊を扱う文献へ度々登場する架空の巨大蛾。
 これを信仰し、死後に肉体の殻から溢れ出る本当の人間を清廉なものに保つために修行を行うのがろ聖生会という新宗教。


■コヒメシュロ育成キット
 コヒメシュロという実際にある樹木にロヒメガの力を持たせたものをヒタヤ商会が作って頒布した。
 水を与える"人間"の霊力に反応し、卵形の器の中へその人間の"本当の中身の模造品"を生成する。
 ここで言う本当の中身は本質のことではない。
 その人間が今まで生きてきた人生の記録が抽象的な形を取ったもの。
 多くはその人間の最も記憶に残っている事柄や、常に思考や感情を占めている事象が強く現れる。


>>359 へし切長谷部/卵
【死産だった妹】
 青江が主が出てきたように感じたのは、主の中身を真似て作られたものだから。
□□□
「主さまは下に御兄弟がいらっしゃるんでしょうか」
 洗濯物を畳む当番の最中、シャツを畳みながら不意に毛利がそんなことを言い出した。
 清光は手を動かしたまま、「どうしたの、急に」と顔を上げず問う。
 毛利の疑問は単なる雑談の延長のようだった。なんとなくそう感じただけなんですけど、と頭の中へ浮かべた記憶をなぞりでもする風に視線を中空へ投げて続けた。
「僕らへの甘やかし方がお兄さんみたいだったので」
 なるほど、と清光は内心で相槌を打った。おそらく一期一振が居るからこその感覚だろう。
 自分は主に聞くまで分からなかった。
 清光は僅かに空いた会話の間を埋めるようにタオルをパンと軽く引っ張ると、
「どうだろうね」
 そう曖昧な返答をした。
 確かに、主には妹が居る。
 お腹の中で亡くなってしまったけれど。
「まあ、兄弟がいなかったとしてもあんな感じだったと思うよ。優しい人だから」
「そうですね」
 ふふ、と毛利が柔らかく笑った。


>>368 千代金丸/冬の夜空
【真実から耳目を覆うもの】
□□□
「あー、えらい目にあった」
 ぼやきながら布団へ背中から倒れ込む。
 やれ検査だ浄化だとやっていたら、本丸に戻る頃には二十一時を回っていた。そこから夕飯と風呂を済ませ、待っていてくれた刀剣男士たちにあらましを説明し、時刻は二十四時に差し掛かるところ。
 本当は残っている仕事も片付けておきたかったが、こんのすけが「一秒でもはやく寝てください」と頭で俺のふくらはぎをぐいぐい押すので断念した。
 こんのすけは命の恩人なので今回は大人しく言うことを聞いた。
 ぼーっと天井を見上げながら、自分の鼓動を数える。
 一時は止まった心臓は、こんのすけの処置が的確だったお陰で問題なく再稼働しているとのことだった。
 みんな冷静に対処してくれていたが、あの宗三ですら顔色を悪くさせていた。心配をかけてしまった。
 いっぱい寝てみんなをはやく安心させよ、と枕元から照明スイッチのリモコンを手に取る。と、次の間と繫がる襖から声をかけられた。
 蜂須賀の声。
 数時間前の帰路で、しばらくの間は眠る時に誰かつけた方がいいのではとこんのすけから言われたのを「大袈裟になりすぎるから」と断ったのだが、やはり気になってしまったのだろうか。
 はーい、と返事をして布団の上に起き上がると、夜着の蜂須賀が襖を開いて部屋に入ってくる。
 その眉が少し寄っているのは、大方「なんでまだ起きているのか」とかその辺りだろう。
 もう寝るところだったよ、と言い訳がましいことを口にすれば、蜂須賀は眉を下げてため息を吐いて言った。
「繧「繝壹?繝ェ縲?繧ェ繧ッ繝ゥ繧ケ縲?繝医ぇ繧ケ、繧√>繧九?縺√?繧?縲?繧斐<縺ゅ§繧薙??縺翫¥繧阪?縺倥s」

「そんな心配しなくても大丈夫だって」
□□□
 この審神者は異なる神の寵愛を受けているため、刀剣男士の声が正しく聞こえない。彼らの声はすべて同じ声で審神者には理解出来ない言葉に変換されて脳に認識される。
 ただしこれは神の言葉ではない。
 世界中のありとあらゆる言語が使われている。しかし神域から現世へ届ける際に音が歪んでいるのと、審神者の知る言語ではないこと、刀剣男士という審神者を守る性質を持つものの声を借りているために、訳のわからない文字列として発声されている。
 もし日本語に変換されて審神者が神の言葉を理解した時は、この神以外のあらゆる存在(刀剣男士だけに限らず、現世に存在するすべてのもの)が認識できなくなる。
 このことは本人すら知らない。
 神は常にひとつの要求を審神者にしている。
「開眼せよ」

>「主ー」
>「迎えにきたさー」
 生きているもの全ての干渉を受け付けない常世に近い場所に居たため、ここだけちゃんと聞こえた。


>>374 山伏国広/鯨骨生物群集
【己を生者に分け与える者。その天命は死によって完遂される】
 迎えにきたのは山伏。
 いずれ審神者はこんな風に誰かのために己を削り続けて死ぬことになるが、今あるこれは卵によって作られた模造品であるため「まだ早い」と連れ帰った。
 滝行云々は嘘。
 別の位相にいたのを引き戻したら滝のところに戻ってきた。

 この卵を育てたら必ず死ぬわけではない。
 千代審神者と山伏審神者の中身が死に繫がるものだったからそうなっただけ。
 千代審神者の中身は寵愛を受ける神の元に帰るもの。
 山伏審神者の中身は死によって完成するもの。


>>383 和泉守兼定/注連縄
【境界を示すもの】
 この審神者は周囲の人間にとってのボーダーラインになっている。
 関わる人間ごとにそれがどういった意味合いを含んでいるのかは異なる。高校時代のグレていた友人にとっては「真人間に戻れるか、このまま人生が終わっていくか」のボーダーラインだった。弟にとっては「夢に生きるか、夢を殺して社会の普通に従うか」だった。
 審神者本人がどうこうしているとか、口出ししていたわけではない。周囲の人間は明確な人生の分岐路で審神者の生き様を見、自分はどうするべきなのかの指針とする。
 特別立派というわけでもない。至って普通。
 蛇が青江に懐いたのは審神者の中身の模造だから。


>>392 前田藤四郎/大きな犬
【見張るもの】
 実家の犬は一切関係ない。
 空き巣云々は完全に偶然。
 審神者の中で見張るもののイメージが犬だった。殻が割れて外へ出されたので鳴いていた(模造品が)。
 鳴き止んだのは卵の効果が切れて模造品が消えたから。


>>396 桑名江/よろこび
【食べ取り込むもの】
 幼い頃、虐待で餓死しかけたことがある。
 本人はその時のことを憶えていないが、中身には色濃く反映されている。
 霊力が不安定で飢えていたところへ、己によく似たものが現れたので食べ取り込んだ。その結果、霊力が安定した。


>>402 水心子正秀/繭
【写しとるもの】
 共感性が異様に高い。
 現在は共に居ることの多い水心子の人格に影響を受けている。
 模造品は、種に加護を与えていたロヒメガを写しとって現れた。
 あの模造品を作り出す元々がロヒメガだったため、生みの親=母親だという情報を写しとった。実母に見えたわけではない。概念としてそう感じただけ。
 このことで「模造品→ロヒメガ→審神者の母親」と写し取られていき、審神者に害を成す可能性がある役人を母親として守るために呪詛を与えた。これで力を使い切って消滅した。


>>412 亀甲貞宗/マトリョーシカ
【解放を望んでいるもの】
 この世界で生きることに絶望しながら命を落とし、再び人間として現世に生まれ落ちることを繰り返し続けている魂の持ち主が審神者。
 本人は前世のことは一切憶えていないが、魂には全ての生が蓄積されている。魂は生命の輪廻から抜け出すことを望んでおり、その影響を受けて漠然とした、「ここから出たい、解放されたい」という気持ちをこの魂を持って生まれた人間は抱き続ける。


>>423 歌仙兼定/蝶
【匱(はこ)へ誘うもの】
 歌仙の人の身を構成する審神者の霊力に反応したので、卵から出てきたのは歌仙の主の模造品。
 白い蝶々は別に歌仙を帰そうとしていたわけではない。たまたまあっちの方向に飛んでいただけ。
 歌仙が白昼夢のように見ていた世界が匱。
 歌仙は匱の中で審神者とロヒメガが混合したイメージを見ていた。最奥の墓を懐かしく思ったのは、今の主だから。腕はロヒメガの加護の力の残滓。
 審神者は大切なものを自分だけが知っている場所に仕舞い込む。幼少期に母親がミニマリストに目覚め、自分の大切なものも全て捨てられてしまった。以来、自分の大切なものは誰の目にも届かない場所に隠すようになった。これは単純に自分のものを守ると共に、己は母親の所有物ではないという、自己を母親から切り離すための行動でもあった。


>>434 大倶利伽羅/小動物
 登場した小動物は、卵一切関係ない通りすがりのちょっとした物の怪。


>>448 秋田藤四郎/主君
【まっくろいおばけ】
 穴の底が見えないのではなく、まっくろいものが詰まっていた。
 まっくろいおばけは他のものから何かを奪って自分のものにしてしまう。
 という審神者の幼少期の妄想の産物。
 審神者はこのまっくろいおばけに自分の声を取られてしまったと思っていた。
 秋田の声がしたのは、今の審神者の声が秋田だったから。


■ コヒメシュロ
 ヤシ科の常緑低木。
 元々室内用の低木として作られたヒメシュロを更に小さく改良したもの。通販サイトなどではヒメシュロとコヒメシュロの区別が曖昧なことが多く、室内用のヒメシュロ全般をコヒメシュロとして販売する業者も多く見られる。しかし最大でも1メートル以内で成長が止まるコヒメシュロとは異なり、ヒメシュロは2メートル近くまで成長するため購入の際は注意が必要である。
 コヒメシュロは幹の成長が終わった後、5月頃に優しい薄紫色の花を咲かせる。香水のような甘い香りがあるが、においが強いため集合住宅やにおいが苦手な場合は花序部分を切る。
 花の房が藤の花に似ていることから、それを簪に見立てて「藤壺の宮飾り」と呼ぶこともある。
 花言葉は『初恋』『あなたの元へ戻る』『あなたの本心が知りたい』

■よろこび
 卵から出てきた模造品はロヒメガの加護の力で形を取っている。
 人間の霊力には反応しているだけで、吸収しているわけではない。
 模造品としての形を取ることで力を使い果たすので、放っておけばそのうち消える。
 このスレに出てきたものも、刀剣に祓われた以外は時間経過で消滅した。
 ひとつを除いて。
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